ナイルパーチの女子会

BSテレ東でドラマ放送しているのを知り、その原作の紹介に興味を引かれたので原作を読みました。

著 柚木麻子さん、2015年文藝春秋から刊行。「第28回山本周五郎賞」「第3回高校生直木賞」を受賞したそうです。

あらすじ

大手総合商社に務める栄利子は、仕事も順調、見た目にも抜かりない女性として、はたから見たら憧れの対象だった。

・・・のだけど、本人は「女友達がいない」ということにコンプレックスを持っている。

そんな彼女の息抜きは、ブログ「おひょうのダメ奥さん日記」を読むこと。

このブログを書いている人は自分と同じ30歳くらいの主婦なのだけど、どうやら女友達がいないうえ、仕事もしていない様子なのに、自然体で読んでいて安心できるのだ。

ある時、栄利子は「おひょう〜」を書いている主婦が自分のそばに住んでいることを突き止める。

ブログ主の翔子と出会え、ようやく友達ができた!と嬉しくなるのだけど、早くも暗雲が立ち込める。

それはなぜなのか?

やっぱり二人とも、女友達を作ることはできないのか・・・?

まず最初、タイトルにもなっている「ナイルパーチ」ってなんだろう?と思ったのだけど、タンザニア原産の淡水魚で、淡白な味で色々な料理に合うことから昔は日本にも輸入され、回転寿司の白身魚としても食されていた魚だそう。

しかしかなり凶暴で、他の生態系を壊してしまうことから、今では「要注意外来生物」とされている。

・・・つまり、「ナイルパーチの女子会」とは、同じ場所で共存できない種の、束の間の交流を暗喩しているのか?

誰もが憧れるような栄利子が抱えている空洞。

その空洞を埋める「女友達」がようやくできた!と舞い上がり、どんどんエスカレートしていく奇行・・・。

その行動が痛々しく、目をそらしたくなるけど、その気持ちもわかるのだ。

友達だと思っていた存在の冷たい行動に「なんで?」と傷ついたり問い詰めたりしたくなったことはないだろうか?

距離感が大事、と頭でわかっていても、納得いかない感情がくすぶる感じ。

だけど、実はそれは自分の視点にしか立っていないから招いたことなのかもしれない。

そこにナチュラルに気がついて気配りできる人と、想像しようとしても頭が霞みがかったようになってしまう人(栄利子)がいるんだよね・・・。

さて追われる側の翔子も女友達がいないのだけど、栄利子のように必死になってはいない。

翔子はそもそも、人に興味がないのだ。

同性よりも、異性(男性)と一緒にいた方がくつろげる。

しかし、栄利子の異常な執着や自分の父の問題などに追い詰められ、気がついたらおかしな行動をとってしまうのだ。

自分の中に栄利子と翔子、どちらの部分もある気がして、ちょっとぞっとした。

でも実は、友達のいない栄利子や翔子よりも、ずっと獰猛だったり狡猾な魚と思われる女性が、色々出てくる。

そのうちの一人が、翔子の書いているブログを「本にしませんか?」と誘ってくる編集者の花井。

主婦ブロガー同士の交流など一見おいしい餌を撒きながらも、実は周到に対抗意識を燃やさせ競争させ、自分は面白がっているのだ。

そしてもう一人が、栄利子の職場の派遣社員の真織。

真織は友達がたくさんいて、いつも囲まれているので、栄利子は実は密かに嫉妬している。

しかし、ふんわり明るいと思われた真織は、1番したたかで強い女性だった。

真織の吐き出した言葉、

「どんな関係も形を変えたり、嫌ったり嫌われたり、距離を測ったり手入れしながら、辛抱強く続けていくしかねえんだよ。」

・・・彼女は、群れを作って結束しながら、その場所の生存競争で生き残っていく種類の魚のような気がした。

とにかく色々な意味で突き刺さるこの小説、「高校生直木賞」に選ばれたということは、高校生ですらこういう空気を感じているのかと思うと、それもなんとも言えない・・・

最後は少し明るい兆しが見えたのが、救いかなと思います。

あ、芋けんぴを食べながらは読まない方がいいかもしれません。笑(後半読めばわかります)

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