「夜行秘密」の曲から生まれた小説の感想
indigo la Endのアルバム「夜行秘密」は、とにかく良い曲ばかりで、今までに何百回再生したかわからないです。
さて、このアルバムをもとにした小説が出版されたということを聞いたのは、同じく川谷絵音ファンである長女から。
長女も読みたいというので、さっそく購入し、読みました。
著者はWebライターから小説家となったカツセマサヒコさん。
2020 年に出された「明け方の若者たち」は、来年北村匠海主演で、映画が公開予定だそうです。
最初読んだ感想は・・・
こんな重い内容!?
ってことでした。
のっけからDVを受けている女性の登場。
恋の始まりと失恋、表現を仕事にすることの渇望や葛藤、セクハラパワハラ、同性愛、SNSの誹謗中傷、果てには殺人まで。
失恋や揺れ動く心をモチーフにした曲が多いのですが、よくぞあのアルバムからここまで色々詰め込んだな!
と思いましたね〜。
曲というオブラートに包んであった残酷な現実を、「これでもか」と生々しく・荒々しく突きつけられた感じ。
正直、胃もたれしたような気持ちになって、しばらくそのまま放置していました。
でもその後、小説を読んだ長女と小説について少し話した時、あまり細かく覚えてなかったことに気がついたんですよね。
自分の中の曲のイメージが壊れたことに拒否反応を起こして、あまり深く読み込まなかったことに気がつきました。
そんなわけで二回目。
今度は、章ごとにテーマになっているタイトルの曲を聴き、歌詞を見ながらまた読み進めてみました。
すると・・・
あらためて、このアルバムに収められている曲が一つの物語として無理なく成立しているということが、すごいことだと気がつきました。
そして、章ごとにテーマになっている曲・歌詞ともに、その章の中心人物にぴったりはまっているんですよね。
それから、物語の登場人物やその周辺で起きることが、妙にリアルなんです。
たとえば、まるで川谷絵音さんをモデルにしたような、バンド「ブルーガール」の岡本音色。
音楽に対して真摯なあまり、恋人をめちゃくちゃに傷つけてしまうのだけど、こんなこと実際にありそう・・とか。
自分の行動からSNSで大炎上してしまう、才能ある映像クリエイターの宮部あきらは、日替わりで炎上している何人かの名前が浮き出てきました。
それと登場人物が自分の立場から発する文章が、本当にハッとさせられるものがたくさんあって、思わずうなずいてましたね。
そうそう「夜風とハヤブサ」の歌詞で、
まさかの言葉で終わりを迎えてロンリー
という部分があるのですが、そこに呼応する(小説の)部分が、本当にまさかで、ちょっと笑いました(ぜひ読んでみてくださいね)。
でも・・・夜行秘密のPVの、ちょっと儚げで幻想的なイメージだったり、与さんの装画からのスタイリッシュなイメージを持って読んだら、かなり想像を裏切られますけどね。
もし indigo la Endのファンでなくて「夜行秘密」を聴いたことがなくても、読み応えがある小説だと思います。
小説読んでから、初めてアルバム聴いたらどんな感じなんだろう?
さて少しだけアルバムの内容の感想を・・・
このアルバム、本当にどれもいい曲なんですが、中でも好きな曲が「華にブルー」「チューリップ」「フラれてみたんだよ」です。
曲はもちろん、歌詞も本当に良いんですよね。
全くindigo la End に興味のない夫ですら、「チューリップ」の歌詞に衝撃を受けていました。
私は過去、「チューリップ」の絵を何枚か描きました。
「フラれてみたんだよ」という曲では、決して感情的な歌詞や曲調ではないにも関わらず、失恋の辛さが胸に深く伝わってきます。
特に歌詞の、
張り詰めて丸を食った 味はしなかったな
風邪を引いた そのせいにしよう
というところ。
ぽっかりと空いた胸の中がひしひしと感じられるではないですか。
失恋て、恨みつらみがつきものだと思いますが、「空虚」になるということが一番辛いのだと思います。
一時は誰よりも近かったその存在が、自分を必要としなくなり、友達としても付き合うことができない遠い存在になる。
「失恋」て残酷ですよね。
さて、ご存知川谷絵音さんは恋愛がらみでかなりバッシングを受けましたよね。
私もその時は「ひどー!」と思ったんですが、自分の気持ちすら自分では制御できないのが人間というもので・・。
こんなはずじゃなかったと思っても人を傷つけたり傷ついたり。
こんな歌詞が出るくらい、自分の気持ちも人の気持ちも深く洞察しているのかなと思います。
川谷絵音さん、今モデルの松本愛さんと順調な交際を育んでいるとのことですが、もしかしてまた音楽が変わるかもしれないですね。
・・・ということは置いておいて、indigo la Endのファンであってもなくても、秋の夜長、ちょっと重めの恋愛小説を読んでみてはいかがかと思います。