「チュベローズで待ってる Age22,32」感想
2017年に出版された加藤シゲアキさんの長編小説です。
主人公の光太が22歳の時と、その10年後32歳の時とで上下巻に分かれています。
加藤シゲアキさんといえば、ジャニーズの「NEWS」のメンバーとして、アイドルとしての人気も大きい人ですが、正直私はアイドルにはあまり興味がなく・・・
でもこのストーリーを書いた小説家として、私の中では「すごい!」と思いました。
あらすじ
就職活動に失敗した光太は、偶然出会った雫に促され、ホストとして働くことになる。
なかなかうまくいかなかったが、ある日美津子という女がホストクラブに現れたことで、流れが変わる。
その美津子は、光太を落としたゲーム会社の面接官の一人だったのだ。
罪の意識を感じている美津子を利用して、ホストクラブのトップに上り詰めた光太。
それだけではなく、美津子の協力で一度落ちたゲーム会社をまた受けることになる。
そしてそこから10年後、32歳になった光太に明かされた真実は、衝撃的なものだった。
主人公の光太、加藤シゲアキさんの姿をイメージしながら読んでました。
帯に書いてあった東村アキコの「この設定、面白すぎてパクりたい!」と書いてあったけど、最初ホストとして全くうまくいかなかった主人公が、その世界でのしあがっていく様子はやっぱり面白く、ぐいぐい引き込まれた!
だけど本当の読みどころは、上巻から10年後を描いた下巻。
早く亡くなってしまった父親の代わりという思いもあり、大事にしていたはずなのに、兄妹の仲はなぜぎくしゃくしてしまったのか・・・。
そして妹の行方は?
大ヒットゲームに突如立ちこめた暗雲は、一体誰が黒幕?
次から次へと起こる問題に、「要素てんこ盛り」という気がしなくもないけど、ページをめくる手が止まらなかった。
Age22でひかれていた、様々な伏線の回収もほんとお見事!
クールな切れ者の上司、八千草のとんでもない秘密にも驚いたけど、特に光太の言うがまま、貢いで尽くしていたと思っていた美津子の抱えていた背景には、思わず「えー!!」っとなってしまった。
それにしても、冷徹な戦略や幾重にも包まれた謎をめくっていくと、実は個々の「復讐」が種だったことが明かされるのには、なんとも言えない気持ちになりましたね・・・。
本当に、人と人との出会いは、その後の人生に大きく左右することがある。
主人公の光太と、随分年上の美津子の出会いは、お互いに相手を利用しようとしていたはずなのに、かけがえのない存在になってしまった。
一番新しい加藤さんの著書「オルタネート 」では、精度の高いマッチングアプリが出てきていたけれど・・・
どちらの小説でも、頭の良い人や人工知能によって、ある程度色々なことの予想ができるようになっても、人の感情や「運命」としか言いようがない結びつきなどは、予想できないものなのだと思う。
まるで村上春樹さんの小説みたいな雰囲気もあり、「君主論」や近未来的のゲームの詳細な説明など、いったい著者の頭の中身はどうなっているんだろう?
アイドル活動の他に、こんな高度なエンタメ小説を書き上げるなんて本当に天才かも・・・
私と長女は、この小説が1番夢中になって読みました。
「オルタネート 」感想はこちら↓