映画「ボサノヴァ 撃たれたピアニスト」

ボサノヴァが渋谷でも大ブームになった時に青春時代を過ごした私、のちに「イパネマの娘」を弾き語りできるようになりたい!とギターを習った(しかし才能なく断念。笑)私ですが、Xで偶然、この映画を上映することを知り、「見に行きたい!」となりました。

そして、劇場ごとに最適化されたサウンドシステム「odessa」で上映する回があるのを知って、「これはライブみたいな体験をできるのかも?」と思ったのですが、「odessa」回はかなり限られていたのですぐ予約することに。

上映は夜20時30分からだったので、朝型人間で夜は出歩くことはあまりない私にとってはちょっとハードル高めだったのですが、土曜の夜20時の渋谷は、道路にはマリオカートに乗った観光客が連なり、歩道も人でごった返していました。

さて、ようやく映画館。

席に座っている人は15人くらい??

えー、少ない!もったいない・・・

ひと昔前はボサノヴァブームだった渋谷ですが、今はあまり関心のある人がいないのかな。

さて、ここでちょっと映画の概要を説明しますと・・・

1960年頃、ブラジルから生まれた音楽、ボサノヴァ(新しい波)が世界を虜にした。

音楽ジャーナリストのジェフはそのムーブメントを調べていくうちに天才ピアニスト、テノーリオの存在と彼の謎の失踪を知ることになる。

そして彼と交流のあった音楽家や家族などに会って話を聞くにつれどんどん彼の唯一無二の存在感と、その人生を無惨に奪った出来事の悲惨さを知ることになるのだった。

実はこの映画を見るまで、テノーリオというピアニストを知りませんでした。

「音楽を主軸とした、サスペンス要素のある創作アニメーション映画」と思っていたのです。

ところが見始めてみて、ようやく「テノーリオ」という実在のピアニストに照準を合わせた「ドキュメンタリー」に近い映画なんだと気づきました。

最初、次から次へと出てくる、実在の偉大な音楽家(スタンゲッツ、カエターノ・ヴェローゾ、ジョアン・ジルベルト、ピアソラなど)に本当に興奮!

だけどテノーリオが、参加していたヴィニシウス・ヂ・モライス(ブラジル音楽の神)の演奏旅行先ブエノス・アイレスで突然失踪してしまったことが、どれだけ周囲を悲しみに沈めたのかということが伝わってきました。

ボサノヴァが生まれたあの時代、満月のように周囲を明るく照らす文化の円熟期。

人々が文化や音楽を楽しんだ黄金期に、その月を覆い隠すような真っ黒な雲のような出来事がたくさん起きていたなんて。

知らなかった・・・

軽めの気持ちで来た私は、かなり衝撃でした。

とはいえ、味のあるアニメーションと陽気な色彩は純粋に、見ているだけで楽しい。

そして、音楽の演奏シーンは素晴らしかったです。

「あの名曲が!」という曲がいくつか出てきて感動・・・!

私もライブの観客になったような気になりました。

また、アニメーションは実写の映像をトレースしたような「ロトスコープ」なのかなと。

登場人物たちの表情がかなりリアルでした。

じゃあアニメ化じゃなくていいんじゃない?となるかもしれませんが、あの話を実写映画にしたら完全に「ドキュメンタリー」という雰囲気になり、ちょっと敷居が高く感じられたと思います。

テノーリオが陥ってしまった境遇があまりにも悲惨すぎて、実写だちょっと耐えられなかったかも。

現実とはなんて恐ろしく無惨なんでしょうね。

さてテノーリオの残した演奏曲を収録した「Embalo」というアルバムがあると知り、しかもサブスクでも聴ける!

この頃彼はまだ23歳だったそうで、失踪したのは34歳。

本当に残念すぎるとしか言いようがないのだけれど、このアルバムを聴けば、輝く彼の魂を感じることができるのではと思う。

もし興味がある人がいたら、ぜひとも聴いてみてください。

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帰りにもらったポストカード。

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イラストレーター ササダテ スイ

幸福感あふれる女性や、リアルな子どもたちの姿を描くのが得意です。
抒情的な水彩タッチから視認性の良いくっきりしたタッチまで、幅広く対応。
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