「竜とそばかすの姫」の感想
「おおかみこどもの雨と雪」、「バケモノの子」などを手がけた細野守監督の最新作「竜とそばかすの姫」が今週から公開されました。
直前に、カンヌ国際映画祭の「カンヌ・プルミエール」部門でセレクション公開されたとして話題になり、テレビでもすごい宣伝されていましたね。
緊急事態宣言もまた出され、我が家の子供達はまたまた学校行事など延期・・・
せめて映画でも!と思い、子供達と一緒に今日映画を見にいってきました。
以下、ネタバレなしの感想を書きます。(あらすじも見たくない、という人はこの先には進まないでくださいね)
あらすじ
内藤鈴は、のどかな田舎町に住む高校生。
学校でも目立たず、殻に閉じこもりがちな鈴だったが、世界で50億アカウントも登録されているという仮想世界「U」に招待され、「Belle(ベル)」という名前のAs(自分の情報をリンクさせた分身)を作ったことで運命が大きく変わる。
実世界では全く目立たない鈴の分身「Belle」は、瞬く間に仮想世界の歌姫として注目されていくのだ。
しかし大規模コンサートが開催される直前、追われる「竜」が表れ追っ手とともに暴れまわり、コンサートが中止になってしまった。
皆憤慨するが、「Belle」(鈴)はその「竜」のことが、なぜかとても気になるのだった。
そして仮想世界中で、「竜」の正体を明かそうという動きが加速していくのだった。
「Belle」の魅力を伝える歌声
鈴の分身「Belle」が歌い出すところは、本当に鳥肌が立つような高揚感!
中村佳穂さんの力強く繊細な歌声が、仮想世界で注目される「Belle」の歌姫としての説得力を持たせます。
一体誰が作曲しているんだろう?と思ったら「作曲家の岩崎太整、世界で活躍するスウェーデン出身の作曲家Ludvig Forssell、宇多田ヒカルや米津玄師の楽曲アレンジで注目されている作曲家・坂東祐大らが参加」だそうです。
そんな天才たちが作っているんですから、そりゃあ素晴らしいですよね。
サントラは8月18日に発売されています。
あと、鈴の友達役(ひろちゃん)の声優をしていた、YOASOBIの幾田りらさん。
このひろちゃん、冷めているけど頼り甲斐があり、鈴をいつもサポートしているという素敵なキャラなんですが、声が本当に自然で、りらさんは声優さんとしてもすごい才能があるんだな・・と思いました。
まるでアトラクションみたいな感覚!圧巻の映像
宣伝でも少し見ていましたが、やっぱり映像美がすごいです!
大きなスクリーンにカラフルでダイナミックでいながら精緻な仮想世界が現れるシーン、まるで自分が入り込んでいくような感覚になりました。
「Belle」は鈴とは違う雰囲気のキャラクターなのですが、「アナと雪の女王」「塔の上のラプンツェル」などを手がけたジン・キムがデザインしたとのことです。
目が大きく、少し鼻が反っている少女って、どの国でもチャーミングなんですかね・・。
私としては、以前よくピンク髪の少女を描いていたので、ピンク髪の「Belle」に勝手に親近感を覚えてました。
でも多々ディズニーっぽい雰囲気が感じられました。
「Belle」と「竜」が一緒にいるシーンなんかは、まるで「美女と野獣」でびっくりでした。
でも映画の世界観とちぐはぐというわけではないんですよね。
さて、「一度失敗したら戻れない現実」とは違う仮想世界ですが、いいことばかりではありません。
普段阻まれている国や性別、言葉の違いなどの壁を取っ払える分、誰もが自分の信念や欲望をダイレクトにさらけ出し、ダイレクトに傷つけあってしまうのです。
そういえば私が若い時(というと今何歳かわかってしまいますが)、インターネットが出始めたばかりだったのですが、肉体にとらわれずに全世界の人たちと交流ができるってすごい!と思いました。
でも便利で素晴らしい反面、デマ、正義を装っての犯人探し・・などが大きな波動にもなりがちで、常にどこかで火事が起こっていますよね。
ストーリーから思い起こしたこと
映画を見ながら、頭に浮かんだ人たちがいました。
「歌姫Belleって一体何者?」と興味を持たれるのですが、今現実でも、ネットから現れた実力派の歌手Adoさんてどんな人なの?となっていますよね。
注目されるっていうことは、賛否両論起きたり、好奇の目にさらされたり、色々と大変だなと思います。
あと、ネットの仮想世界と現実をどうリンクするかというテーマは、加藤シゲアキさんの「チュベローズで待ってる」や、最近発表された「オルタネート 」では、自分の情報からぴったりの相性の相手を探すアプリが物語のキーとなっていたのを思い出しました。
これからはさらに、仮想世界が広く深くなっていくんだろうなと思います。
ご興味あったら、感想文どうぞ↓
この映画から、近未来のエンターテイメントを考えた
仮想世界で「Belle」が歌うシーンは、色々なドレスやアニメーションならではの様々な演出がされています。
今、コロナ禍で舞台やコンサートができずに苦しんでいるアーティストが世界中にいるんですが、ネットライブなども最初こそ視聴チケットが買われたものの、段々と売れなくなっているそうです。
私も好きなアーティストがいますが、耳だけでなく体全体で体験するライブと、同じ価格でいながら家の小さな画面で見るのだったら、やっぱりネットライブのチケット買おうという気にはならないです。
それだったらDVD買うよね・・・。
でも、「同じ」ではなく、ネットという仮想空間ならではの演出や臨場感が出せるなら、買おうという人、もっと出てくるんじゃないかな。
例えば、ゴーグル型のディスプレイなどで再生できるバーチャルリアリティコンサートとか。
その中では、現実では体験できないような浮遊感や臨場感が体験できる。
いや、きっともう、そういうコンテンツ製作しているかもしれませんが。
ゴーグル型のディスプレイも、そのうち1人1台持つのが当たり前の時代が来るかも・・・。
とはいえ、この映画でもそうなんですが、結局主軸は現実世界。
これからは、生まれた時からデジタルコンテンツに触れながら育ってきた人がどんどん出てくると思いますが、どう仮想世界と向き合うにしても、やっぱり現実世界での試行錯誤や、体で体験することが生きていくことの「核」であることは間違いないと思います。
実は我が家の末っ子は、つい最近まで「マインクラフト」にはまっていたんですが、急に視力が下がってしまってこのままいったらメガネということになり、ゲームも動画視聴もいっさいやめさせました。
そしたら、他の同級生たちと汗まみれになって公園で遊んだり、手を動かしてレゴブロックで作品を作ったりするようになり、これでよかったな・・と思ったりもしました。(とはいえ夏休みに入ってからは、緊急自粛宣言で遊べていません)
学校でもクロームブックを使っているし、この先デジタル機器は絶対に不可避なんですが、特に子供のうちは、なるべく体験して感覚を磨いてほしい。
だって子供にとって、この世界そのものが新しいことに満ちているから、人が作り出す世界に没頭する前に、この世界の不思議をいっぱい体験してほしいんです。
・・・と、映画の話からそれました。
さて映画の感想に戻りますが、そうそう映画で泣くってことないんですが、この映画では涙がぶわ〜っと込み上げてきました。
歌とか物語とかアートとかって、本当にすごいな、良いな・・としみじみ思いました。
正直言うと、ちょっと納得いかない部分もありましたが(特に後半)・・・それを差し引いても見に行ってよかったです。
そして見るなら絶対に、映画館で見る方が良いです。
2時間くらいあるので、小さい子供は厳しいかもしれませんが・・・。
映画もそんなには見れないのですが、やっぱり良いですね。
実は以前から「JUNK HEAD」が気になっているんですが、こちらは家のそばでは上映していないので、なかなか行けないんですよね。
では長くなりましたが、行こうか迷っている人の参考になればと思います。