映画「ミシェル・ルグラン 世界を変えた映画音楽家」
2019年に85歳で亡くなった、フランスの音楽家、ミシェル・ルグランのドキュメント映画が公開されたのを知り、新宿武蔵野館まで見にいってきました。

(初めて行った映画館なのだけど、通路をはさんだ、後ろから4列目はちょっとスクリーンから遠かった・・・。もし次来ることがあれば前から5列目くらいにしたい)
さてミシェル・ルグランについて簡単に紹介。
音楽家の父を持ち(しかし子供の頃母と離婚したのでほぼ関わっていない)早くから音楽の才能を開花させたミシェル。
音楽学校で徹底的に技術を鍛え上げられ、ジャズに至るまで幅広いジャンルで活躍し、さらに映画音楽も手がけるようになる。
そして中でも一躍有名になったきっかけは「ロシュフォールの恋人たち」の映画音楽でした。
ジャック・ドゥミ監督とのコンビで「シェルブールの雨傘」に続くこの映画は、時代が変わっても常に見る人に新鮮な感動が湧き上がるような・・・今でも世界中に影響を与えている映画です。

斬新でおしゃれな映像、そしてその世界観を音楽で見事に彩ったミシェル・ルグラン。
私が学生の時、これらの映画のサウンド・トラックは【絶対はずせない名盤】としてCDショップなどで飾られていましたが、今でもそうなのではないでしょうか。
(ここから映画の内容に触れます)
映画では晩年のミシェル・ルグランから始まります。
自分の思いどおりの曲作りにならないと、容赦無く・妥協なく周囲を叱咤。
見る限り・・おそらくけっこう無茶なことも言っていそう。
そんなミシェルに周囲は振り回され、時には怒りも覚えながらも、どうしようもなく愛し尊敬しているのが伝わってきます。
なぜならば、彼は常に自分のベストの音楽を追求しているから。
実はかなりの美声だったのも初めて知りました。
2018年にブルーノート東京に来て演奏していたシーンもありました。
行けた人は本当にラッキーだったでしょうね。
映画では円熟した晩年から始まり、若い時のエピソードに戻ったり周囲の人たちにインタビューしたりと、彼の送ってきた人生を立体的に映していきます。
同時代を活躍したエンニオ・モリコーネは賞からだいぶ無視され続けていましたが、ミシェル・ルグランは若いうちから評価され、アカデミー作曲賞を一度、アカデミー歌曲賞を二度、そして海外の様々な賞をもらっています。
ですが、賞そのものにはあまり興味のなかった様子。
彼にとって重要なのは、彼の中に溢れ出る音楽をこの世の中に生み出し続けることなんだ、と伝わってきました。
そしていよいよ最晩年・・・
立つのもやっと、命の日が消えかけているように見えるのに、最後のステージに立ち指揮棒を振ります。
その姿を見て、涙が溢れてきました。
ですが彼はきっとその時、涙1滴を流すエネルギーもなかったと思います。
尽きかける命を振り絞り、最後の最後、燃え尽きるまで、音楽に全身全霊をかけていました。
そして音楽を愛し、音楽からの愛で世の中照らし続けた人生を終えたのでした。

「一生懸命生きること、生き切ること」・・・
それが自分はできているのか?と思わず自身に問わずにはいられませんでした。
それにしても、ミシェル・ルグラン2019年没(85歳)をはじめ、イタリアの音楽家・エンニオ・モリコーネ2020年没(90歳)、と映画音楽の巨匠が同時期にあいついで亡くなっていたんですね。
私個人で言うと、学生の時に衝撃を受けたフランスの映画監督ジャン=ジャック・ベネックス2022年没(75歳)、ブラジル音楽のギターの神様ジョアン・ジルベルト2019年没(88歳)、ブラジルの音楽家セルジオ・メンデス2024年没(83歳)といった面々もここ数年で相次いで亡くなっているので、いちいち衝撃を受けました。
今も、数多の才能ある音楽家がいるのでしょうが・・・
この人たちのように、音楽界・映画界を超えて大衆の文化を変えるほどのインパクトを持つ人、そしてムーブメントはそうそう現れない気がします。
命は短いけれど、残された音楽や映像は残り、後世の人間に影響を与え続けていくことを考えると、すごいなとあらためて思います。
音楽にまつわる映画の感想
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イラストレーター ササダテ スイ
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